2018年7月26日木曜日

チェルシーの登録枠と補強18/19夏

 この夏のチェルシーは補強に苦戦している。今季から市場締切が開幕前の8月9日に早められたにもかかわらず、だ。英国メディアもこのチェルシーの現状を異常と捉えており、アブラモビッチの野心を問うコラムや、交渉役マリナ・グラノフスカヤを批判するコラムも出てくるようになった。


 チェルシーが補強に難航している理由は単純ではない。複数の要因が相互に作用し、複雑だ。チェルシーがCL出場権を逃したというシンプルで分かりやすいものから、アブラモビッチが英国に入国するためのビザ(しかもinvestor visa!)の延長が認可されていないせいでオーナーからの資金注入が現在不可能っぽいというマニアックなものまでたくさんの話が報じられているが、今回は登録枠という観点から補強の話をしたい。


 以下の表にまとめたのが、7月26日現在のスカッドメンバーを登録枠に当てはめたものだ。新加入選手は太字で、ローンバックの選手は背景を灰色にしている。


 ちなみに、登録におけるルールは以下の通り(ちょっと長いので読みたい方だけどうぞ、◎のところをクリックで展開します)。


 この表から何を一番言いたいかと言うと、巷で言われるようなチェルシーはHGの選手が足りないということではなく、非ホームグロウンの選手枠がパンパンで放出しないと補強しても起用できないということだ。
 例えば、ルガーニ獲得でCB過多となりケイヒル放出につながる可能性がある、なんて報道がされているが、登録枠の観点で見るとケイヒルを放出しても今のままではルガーニを追加登録する場所がないのだ。ルガーニを登録し使うためには、他の非HG選手も放出する必要がある。

 ちなみにこれは余談だが、HGが足りないこと自体は印象がよろしくないだけでさして問題ではない。もちろんHGを充実させることで選手層は厚くすることは重要だ。しかし、HGが足りていないままチェルシーはプレミアリーグもチャンピオンズリーグも優勝してしまった(笑)

 ということで、問題は「補強のために放出されるのは誰か」ということである。とりあえずここまでがまず言いたいことなので、あとは非HG選手の放出に関する個人的な推考を行っていきたい。


 まず、ズマはやはり今季もトップチームに残るのは厳しいと言わざるを得ない。CB陣の中で最も遅れを取っているズマに非HG選手枠を費やすのは賢い選択とは言えないだろう。また、同じローンバック勢のカラスとピアゾンも実力から考えて無理だろう。

 既存の非HG選手で既に放出が決定的な選手がクルトワだ。アリソンを獲得できなかった今、シュマイケル(レスター)やバトランド(ストーク)といった選手の名前が報じられている。彼らはクルトワよりは劣るものの、ホームグロウンの資格を持った選手だ。
 シュマイケルやバトランドが候補に挙がる理由も、クルトワ放出によって非HG枠を空けるためなのではないだろうか。もちろんGKは極めて重要なポジションでありHGに関係なくハイスペックな選手を確保してほしいが、現状他にも補強すべきポジションがあり、そこに適したHG資格所有者はいないのが現状だ。そのため、GK補強をシュマイケルやバトランドとして、空いた非HG枠を他ポジションに回そうとしているのではないかと考える。

 また、GKについてはクルトワだけでなくカバジェロも放出することで、1st GKは質を最優先、2nd GKをHGで枠を空ける、という解決策も考えられる。しかしながら、ここからGK2人を確保する時間的・経済的猶予があるか、そしてW杯で評価をガッツリ下げたカバジェロおじさんに買い手がつくのか、という問題がある。こちらはやや現実的ではなさそうか。

 クルトワに次いで放出報道が加熱したのがウィリアンだ。30歳目前、高給取り、残り契約2年、コンテに謀反、そんな選手に高い移籍金を払ってくれるクラブが現れればチェルシーは売るだろう。これが英国主要メディアの論調だ。そしてウィリアンを売ることで非HG枠を空けることもできる。TelegraphのMatt Lawがウィリアン売却でゴロヴィン獲得、と関連付けて報道した背景にはこうした事情もあるのではないか。
 しかし、その筆頭候補であったバルセロナさんが世界からひんしゅくを買いながらマルコムに乗り換えてしまった。ウィリアンは構想外ではなく、あくまで高額オファーが来れば売却を検討という位置付けなので残留するかもしれない。

 あとはストライカーだ。現状、モラタ、ジルー、バチュアイ、エイブラハムの4人がおり、エイブラハムはU21選手として登録枠に縛られない扱いとなる。そして、さらに新ストライカー獲得の報道が連日なされている。モラタ、ジルー、バチュアイの3者全員に移籍の噂はあるものの、現時点では誰がどうなるか全く読めない状況だ。
 ここは主観だが、若手育成だけでなく非HG枠を空ける観点からもエイブラハムは残していいと思う。とはいえ、実力を考えれば新ストライカー、モラタ、ジルー、バチュアイから3人を残す選択になるだろう。この場合、ストライカー3人全員が非HG選手となり、他ポジションの補強に充てる非HG枠が圧迫されてしまうことになる。仮にこの選択をするならば、先述のようにGK補強をHG選手ですますことで非HG選手枠を空けるのではないだろうか。(あえて○グアインと言わず新ストライカーで押し通した理由は察して)

 他に非HG選手で売却の可能性があるとすれば、ザッパコスタだと考えている。モーゼスを右SB要員と考えれば、このポジションにはアスピリクエタ、モーゼス、ザッパコスタの3人に若手枠でアイナが控えることになる。アイナの去就は不透明だが、右SBはいざとなればリュディガーで穴埋めできるポジションであるため、主力級は3人もいらないだろう。
 あとは売却ではなくローン放出による解決策として、バカヨコだろうか。個人的には残って欲しい選手だが、他のクラブからの引きはあり、中盤の補強次第ではローン放出が有り得そうだ。

 なお、アザールに関してはあえてここで話をするつもりはない。仮に彼を放出することになっても、その放出は決して選手枠を空けるためのものではないからだ。


 こうして登録枠のことを考えると、改めて補強の難しさ、編成の難しさを感じる。ただ、登録枠の観点で補強を考えたとき気付かされるのは、各ポジションの出入りだけではなくスカッド全員のバランスも考える必要があるということだ。自分も新GKがクルトワに劣る選手だとふざけんなと言いたくなるが、選手枠を空けるためにHG選手にしたと言われると納得する部分もある(それでもGKは重要なポジションなので実力を最優先してほしいが)。

 残り2週間の移籍市場でマリナ・グラノフスカヤを中心とした強化部がどう解決策を見つけるか、見守りたい。


◎補足
 アンパドゥは、プレミアだとu21扱いになる一方で、ELだとu21ではなく国内育成扱いになります。これは、ELのu21選手の条件に「そのクラブに連続して2年以上在籍」というものがあり、これを満たしていないからです。


2 件のコメント:

  1. カバジェロは契約延長してましたっけ?今夏までだった気がするので、彼を放出してGK全入れ替えもありですよね。
    ただFWは正直3人も抱えないと思いますよ。新戦力、モラタ、ジルー、バチュアイ。新戦力が来るかはまだ不透明ですけど出場機会や非HG枠的にも2人が適切。現状はモラタ、ジルーが有力でバチュアイはレンタル。新戦力が来るならモラタと入れ替えだと思います。
    アンパドゥもズマ、ケーヒル退団でようやくスカッド入りの可能性が残るレベル。ルガーニ来るなら間違いなくレンタルです。ここからは補強するなら放出とセットになるはずなので、非HG枠の問題もそれほど大きくないと感じます。

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    1. コメントありがとうございます。

      カバジェロは1年の契約延長オプションを行使したみたいです。実際、リーグ公式サイトにあるretained listにも彼の名前がありました。
      http://www.goal.com/en/news/chelsea-keep-caballero-contract-amid-transfer-fight-to-keep/t3tsi83slb0u1g0dsumhdta45

      放出と獲得がセットになるというのはおっしゃる通りだと思います。FWに関してはカリニッチ移籍の動き再開でジルーどうなるかとか、イグアインを巡ってモラタが宙ぶらりんになっていたりとか、今後が全く読めないなと感じています。個人邸には2枚+タミーでいいのかな~と思います。

      非HG枠のせいで補強が進まないというよりは、既に枠が満たされている状況であるということ、そのため今後間違いなく(準)主力級の放出が避けられないということが本文の趣旨だとご理解いただければ幸いです。

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