今夏、クアドラードは昨年度に続きユベントスへローンとなった。しかも、非常に複雑な契約形態であった。
クアドラのローン契約
①2019年6月までの3年ローンクアドラードは14/15シーズンの1月に、移籍金30m€、4.5年契約でチェルシーに移籍してきた。週給は100k€(1年を50週とすると年俸5m€)という報道あり。2016年夏の時点で、チェルシーとクアドラードの間に残された契約は3年であり、3年ローンはつまりクアドラとチェルシーの離別を意味する(実質的な売却)。
②ローン費用は5m€/yr
③ユーベは買取OP、もしくは一定の成績を残すことで発生する買取義務を有している。買取に伴う費用は25mであり、これは3年間で支払われる。また、既に支払われたローン費用がここから差し引かれる。
④選手がユベントスに在籍している間にさらに一定の成績を残した場合、ユーベはチェルシーに4m€のボーナスを支払うこととなる。
チェルシーが支払った移籍金は、契約期間において6.66m€に償却され、ローン期間内はユーベがサラリーを全額負担していると仮定すると、この償却分が帳簿に計上されることとなる。さらに、今後3年間はローン費用5m€/yrが支払われることで、クアドラード獲得による帳簿上の支出はこれを差し引いた年間1.66m€となる。
額面通りにシンプルに考えると、チェルシーは獲得に費やした30m€を回収できる可能性がある。15/16シーズンのローンによりチェルシーは1.5m€のローン費用を得ており、今後三年間で少なくとも15m€のローン費用をさらに得ることとなる。もしユーベが買取を行うとなると、15mから25m€にまで収入が上昇する。さらに、ボーナスまで発生した場合、追加で4m€を得ることができる。以上を合わせると、合計で約30m€となり支払った移籍金を回収できるというわけである。
しかしながら、FFPの観点から見れば実際は各年次ごとに収支が計上されるため、チェルシーへの追加の支払いが生じた場合は今後数年間にわたって段階的に計上されることとなる。
今後考えうる最悪のケースとしては、クアドラードのローン契約に含まれる追加の支払いが全く生じないというものであり、この場合チェルシーが得られるのは総額16.5m€(15/16および16/17~の3年間、合計4年間で得られるローン費用の合計)のみとなる。つまり、4.5年の契約のうち彼が実際にチェルシーでプレーしたのは半年のみであるため、チェルシーはたった半年のために差額の13.5m€(と、さらに彼のサラリー)を費やしたということになるわけだ。
サラリーに関して。ここまでローン期間内ではユーベが全額負担と仮定してきたが、2016年夏市場閉幕後に伊メディアが公表したクアドラードの推定年俸は3m€とされている。チェルシーが獲得時に合意したサラリーが先述した5m€であるとするならば、ローン期間内もチェルシーは一部のサラリーを負担していることになる。
ただ、calciomercatoの記事によれば、クアドラードとユーベはサラリーにおいて年俸3m€で合意したとされており、端的に言えば自身が希望するユーベ再加入のために減給を受け入れたという可能性もある。クラブ間での契約内容は明かされているが、選手との契約についてはどうしても憶測の域を出ない。
(10/12 追記) サラリーについて、イギリスでは税引き前のものが取り扱われ、イタリアでは税引き後のものが扱われるそうです。よって、必然的に報道される額は英>伊となるため、そのギャップが上記の報道となった可能性が考えられます。
コンテはクアドラを気に入っておりスカッドに組み込むことを考えていたようだが、高給の彼をアザール、ウィリアン、ペドロに次ぐ控えとして置くことは賢明とは言えない上に、本人がイタリアへ戻りたがっていたのだから残すわけにはいかなかっただろう。そのうえで、完全移籍に準ずるローン移籍で獲得費用を回収できる可能性を残したのだから、悪くない取引とは言える。ユーベにとっても完全移籍で買い取るよりもこの形態の方がFFP的に有利であるため、それぞれの思惑を汲み取った着地点がこの奇異なローン移籍であったのだろう。
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