ちなみに、タイトルの言葉はMirrorの記事を転載、改変したSunによるものです。実際にヘクター本人がこの言葉を述べたわけではありません。(さすがザサンという感じです)
<元記事>
① TheGuardian : 'It’s Chelsea, they can buy basically any player they want'
② DailyMirror : Hector hopes Reading loan spell can boost his Chelsea chances
④ EveningStandard : Chelsea back Hector to play role at Stamford Bridge
⑤ 公式サイト : Hiddink: As nature intended
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2015年8月31日、ヘクターは家族と親族の集まりの場にいた。実は当時、レディングで初めてCBのレギュラーとしてフルシーズンを過ごしたことが評価され、クリスタル・パレスへの移籍がすでに大詰めとなっていた。1本の電話が鳴るまでは。
「あの日(デッドラインデー前日)は父とブロムリーにいる親戚のもとを訪れていた。あの時は自分はパレスへ移籍するものだとばかり思っていたよ。取引はもうほとんど終わっていて、あとは現地に行って手続きを完了させるつもりだった。そしたら、1本の電話が入って父がその場を離れたんだ。『今の電話、誰からだったか分かるか?』と父は戻ってきて僕に聞いてきたよ。その電話はチェルシーのダイレクターの1人からで、移籍をかっさらいたいというものだったんだ。はじめは父が冗談を言って僕をからかっているだけだと思ったよ。」
ヘクターはイーストハムで育ったが、その生涯に渡って彼はチェルシーサポーターである。チェルシーが獲得に興味を持っていると知ったその瞬間、決まっていたことは全て白紙に戻り、彼がすべきことはデッドラインまでにチェルシーへの移籍手続きを完了させること、もうそれだけだった。
「チェルシーが連絡を寄越してきたその瞬間から、僕が行きたいチームはチェルシーだけになった。僕はチェルシーファンだし、チェルシーは世界でもビッグクラブの1つだ。その日の夜遅くにスタンフォードブリッジで交渉を行って、翌日にはメディカルチェックと契約書にサインをして全てを終えたよ。ちょっとクレイジーだったし、てんてこまいだったね。」
モウリーニョとは『君はレディングへ戻ることになる。今すべきことに集中して、ハードワークに努めろ。』とわずかな言葉をかけられ握手を交わしただけ。ほろ苦いものだった。それでも、ヘクターは特に問題ないと気に留めなかった。
「僕はレディングにいる時から既にいくつもローン移籍を経験していたし、1番大切なことはフットボールをできるのが保証されていることだ。当時の監督だったスティーブ・クラークはレディングに戻るうえで重要な要因だったよ。その前のシーズンに副キャプテンを任せてくれて、たくさんの自信を与えてくれた。彼が、僕をローンバックさせて自分のもとでプレーさせたがったんだ。彼に電話で呼び出されて言われたよ、『お前は戻ってこないといけないんだ、そして俺たちを昇格させろ。』ってね。」
「エディ・ニュートンやパウロ・フェレイラが試合や練習の視察に何度も何度も訪れてくれてる。見に来てくれるだけじゃなくていくつか言葉も交わすよ。それに、チェルシーのローン選手の分析担当者がまとめてくれたレポートにも目を通している。加えてレディングのスタッフからもアドバイスをもらえるし、おかげでたくさんのフィードバックが得られてるよ。自分はラッキーだと思う。」
「僕には改善できるところがいくつもあるし、チェルシーが僕に満足しているところもいくつかある。今シーズンは中盤でプレーすることが何度もあったけど、マクダーモット監督がそのことについてもチェルシー側と話してくれていたんだ。このコンバートで僕は組み立てのスキルを伸ばすことができたと思うし、チェルシー側もこの部分の成長に興味を持っているみたいだ。このまま成長を続けていきたいし、そのためにたくさんの手助けを受けているところだよ。」
それでも、チェルシーに割って入ることは途方もないものに見える。ローン勢にもクリステンセンやカラスなど複数のCBがいる上に、この冬にはミアズガも加入した。中盤でプレーできることに関しては、アケも同じくプレー可能だ。
「それがチェルシーだよ。知っての通り、チェルシーは基本的に望んだ選手は誰でも買うことができる。でも、優秀なCBたちと競い合うことは僕にとって成長の助け以外の何物でもないんだ。だから、それで自分が忘れられちゃうんじゃないかとか心配することはまずないよ。」
「物事がうまく進めば、夏にプレシーズンツアーでトップチームに帯同出来ると思う。そこから何が起こるか見てみよう。物事がどうなるかなんて誰にもわからないさ、今までだってレディングのトップチームに加わるまで何度もローンを繰り返しながら待ってきたんだから。だから、僕はこういう状況の扱いにはもう慣れているんだよ。」
慣れていると彼は言うが、ヘクターはレディングでデビューを果たすまでに実に11ものローン移籍を経験しているのだ。彼が18歳の時、ホーシャムFC(アマチュアリーグ所属)で過ごした10/11シーズンでは11試合で3枚ものレッドカードをもらい8試合の出場停止処分を受けたこともある。
「もっと早く大人になってるべきだったよ、当時の僕はノンリーグでプレーするにはかなり未熟だった。それでも、ファンの前でプレーすることで得られる本当の興奮を知ることができたよ。たった数百人だったかもしれないけど、それでも未だに沸き立つものがある。こういう試合は、出場給が住宅ローンの返済に使われるような人たちと一緒にプレーするようなもので、ユースチームの試合よりもうんと個人的なものだ。人々もゴール裏でトップクラブの試合では決して見られないようなことをしでかそうとする。自分のローンキャリアの中でも、ノンリーグ時代は一度ミスを犯そうものならロッカールームはまるで戦争みたいになったよ。そこでは1つのミスがそれを以上のものを意味することになるからね。」
「レディングではたくさんの年下に対して、若いうちにローンに出てみろよと言ってきてるんだ。大人の世界のフットボールを経験するためにね。そうして戻ってきた時に、アカデミーで自分は本当によくしてもらっていたんだと感謝することになるんだよ。でも、はじめは誰も分からない。だからこそ若い子に、時には綺麗ごとだけでは済ませられないこともある、それでもやるしかないってこともある、と僕は伝えたいんだ。」
23歳となった彼は、父がルーツを持ちクリケットの代表選手としても活躍した、ジャマイカ代表を選択しA代表デビューを飾った。そしてウェズ・モーガンと共にコパアメリカやゴールドカップでプレー、ゴールドカップではジャマイカの準優勝に貢献した。
好機逸するべからず。ヘクターは忍耐力でチャンスをモノにしてきた男なのだ。
記者:Nick Ames 2016/3/11 TheGuardianより
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マクダーモット監督は、ヘクターは来シーズンチェルシーへ戻ることになると明言した。チェルシーは今シーズンでジョン・テリーが契約満了となる可能性がある。ヘクターは今シーズン本職のCBではなく中盤でのプレーを多く任されていたが、この経験がテリーの抜けた守備陣の補強として帰還した場合に役に立つことを期待している。
「僕は今までたくさんのポジションでプレーしてきた。右SB、CB、セントラルMF、そして右のウイングも。このおかげで、異なるポジションでのプレイにも順応できるし、試合をより深く知ることができる。」
「レベルが高くなればなるほど、ディフェンダーとして守備する時と同じようにボールの扱いにもより長けている必要がある。中盤でプレーすることはボールの扱いが上手くなることの助けになるんだ。CBに戻った時に、この経験を活かしてより足下に余裕を持てるように、そしていいプレーができるようになりたいんだ。」
チェルシーの上層部、特にTDであるエメナロはヘクターのユーティリティ性とスキルに期待している。今シーズン更にレディングで経験を積んだことで、ヘクターが来シーズンのスカッド内で役割を持てると考えている。
ヘクターは35試合に出場し、ピアゾンと共にローンを切り上げ5月から約1か月の間トップチームで練習に参加することとなった。首脳陣へのアピールタイムが与えられたわけだが、その中でヒディンクが彼のことを称賛している、と公式サイトで紹介されている。
「ヘクターはピアゾンと共にコバムに戻ってきたが、チームの中でうまくやってくれている。私にとって彼のプレーを見るのはこれが初めてだよ。簡単ではあったが、少し会話も交わした。」
「彼にとってはプレー速度が上がることになるし反応していかなくてはならないんだが、彼はすぐに学んだよ。試合や練習のペースにも慣れていかないといけないが、彼にとっては時間の問題だと考えている。」
夏の最終日に突然やってきた知らない選手は、もしかしたら案外掘り出し物なのかもしれない。
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