2015年5月28日木曜日

チェルシーの育成について考えてみた。 Vol.2

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 Vol.1では選手育成を行う上での環境面の難しさについて述べた。だが、そもそもチェルシーは「育てないクラブ」なのだろうか。
 チェルシーの育成部門はここ数年、確実に成果を上げている。U21プレミアリーグでは現行のシステムとなった13/14シーズンで優勝、今季も優勝争いを繰り広げた。FAユースカップでも09/10、13/14、14/15シーズンで優勝しただけでなく、決勝進出は4シーズン連続、準決勝進出となれば6シーズン連続だ。国内だけでなく、13/14から導入されたUEFAユースリーグにおいても、初年度はベスト8、14/15シーズンでは優勝と欧州の舞台でも目に見える結果を出している。
 この中で特筆すべきは、FAYCにおける成績の継続性だ。世代が変わってもしっかり結果を残していることは、組織として育成がうまく行われていることを証明している。
 さらに、テレグラフによる The top 35 hottest prospects in English football という特集ではチェルシーから最多の5人が選出された。また、最新(5/25時点)の世代別イングランド代表に関しても、チェルシーからは計19人と最多の招集人数を誇る。
 
CFC
MCFC
MUFC
AFC
THFC
LFC
U21(5/20)
3
0
1
2
4
0
U20(3/20)
2
0
0
1
0
0
U19(3/17)
4
4
0
0
1
0
U18(3/18)
3
1
0
1
3
1
U17(4/23)
2
0
0
2
1
2
U16(3/13)
5
2
0
3
3
0
Total
19
7
1
9
12
3
表:主要クラブにおける最新の育成年代の招集人数

 ただ、この数字はあくまで現所属の人数であり、○○ユース出身といった情報が反映されないことは留意されたい。とはいえ、チェルシーは外から青田買いばかりしているのかと問われれば、答えは否だ。優勝したUEFAユースリーグ決勝のスタメンでは、5人が生え抜き、さらに8人がU13からチェルシーに所属している。中でもEngland Youth Player of the Year に今シーズン選ばれたFWドミニク・ソランキや、来シーズンからトップチーム昇格が決まったMFルベン・ロフタス=チークの2人に至っては、共にU8からチェルシーでプレーする選手だ。

 こうして見ると、チェルシーは育成部門にもしっかりと力を注ぎ、それが結果にも表れてきていると分かる。「チェルシーは育てないクラブ」というのは、限定的な知識のみで形成された誤った印象論にすぎない。むしろ、取り沙汰されるべき問題は、育成された若手や将来を買われチェルシーに移籍した若手がトップチームに反映されないということなのだ。


 では、なぜこうしたアカデミーの素晴らしい成果がトップチームのスカッドに反映されないのだろうか。ビッグクラブとしての立ち振る舞いやチェルシーのトップチームが求める水準など、いくつかの理由はVol.1でも述べたが、ここでは異なる視点で考える。
 それは、イングランドにおけるBチームのあり方についてだ。現時点ではU21のチームがこれに該当するのだが、問題はU21プレミアリーグという独立したコンペティションに属しているということである。現行のシステムでは昇降格も存在し、真っ当なリーグ戦が構成されているように見えるが、世代で区切ることで対戦相手は似たようなレベルの選手ばかりとなり(調整という名目でビクトール・バルデス、ロビン・ファン・ペルシー、ラダメル・ファルカオを同時に並べてくるとんでもないチームもあるのだが)、大差のない選手間またはクラブ間での争いになってしまう。
 これに対して、スペインではレアルマドリー・カスティージャやバルセロナBのように、Bチームが2部や3部といったリーグ戦の中で切磋琢磨している。オランダでも試験的にアヤックス、PSV、トゥエンテの3クラブがBチームを2部リーグに参加させている。イングランドで言えば、Bチームがチャンピオンシップやリーグ1に所属していることになるわけだ。下部リーグとはいえ、所属する選手はそれぞれ育成年代を勝ち抜けた選手や実力を請われた外国人であり、大差ない選手ばかりで構成されたリーグとはまるで環境が異なる。加えて、その環境の中でクラブの命運がかかった昇格降格が伴うシーズンを過ごすわけだ。得られる経験値には目に見えて差が出るだろう。だ。
 実際、レンタルで下部リーグへ武者修行に出ている選手は口をそろえて「ユースカテゴリーとシニアの試合は全くの別物だ」と言っている。シニアの世界では、そのクラブの存在が生活に組み込まれたサポーターが存在する。クラブだけではなく、選手たちにとっても1試合、1プレーがそのままサラリーや契約という形で自らの生活に直結する。フットボールをするということの1選手にとっての重みがまるで違うのだ。
 さらに、2部や3部にBチームが所属することで、経験を積ませる目的でのレンタルを避けられるというメリットもある。チェルシーでは昨シーズンU21の主力だったルイス・ベイカーやジョン・スウィフトなどが今シーズン下部リーグにレンタルされているが、これが不要になる。このことが生み出す利益は多い。レンタルには借り手のクラブの事情により、出場機会が確保できないリスクが存在する。例えば、トーマシュ・カラスは今季前半戦はケルンにレンタルされたが全く出番が与えられず、2部のミドルズブラへ再レンタルとなった。Bチームが下部リーグに所属していれば、こうしたリスクや失敗を回避できるうえに、出場機会の調整も自分たちで行えるわけだ。また、選手の視察も容易になる。トップチームの試合がない日ならば監督がホームスタジアムに行くだけで目当ての選手の視察が可能だ。さらには、ホームグロウンの面でも非常に大きな意味を持つ。Bチーム所属ということは当たり前だがチェルシー所属ということであり、その間にホームグロウンステータスを獲得できる。CLや新ホームグロウンルールで重要となるクラブ育成枠(21歳までに3年以上そのクラブに所属した選手)にも自然に該当するようになる。チェルシーやマンシティが登録枠で頭を悩ます一方で、毎シーズン同様に莫大な資金で補強を繰り返すレアルマドリーがCLのクラブ育成枠で苦労しないのもカスティージャの存在のおかげだ。
 FAは育成を重視するのならば、早急にBチームを下部リーグに参加させるべきであろう。チャンピオンシップをはじめとする下部リーグにも歴史はあり、色々と障壁はあるのは間違いない。しかしながら、現行のU21プレミアリーグでは限界を感じざるをえない。

 さて、若手選手とクラブの未来を考えた時、チェルシーが目指すものは何であろうか。有望な若手を多くトップチームに定着させることはもちろん重要だ。しかし、まず我々に求められるのはタイトルだ。今シーズンはFA杯で呆れるほど不甲斐ない敗北を喫したが、COCとリーグの2冠を達成し国内では成功したシーズンだったと言えるだろう。だが、CLではベスト16で敗退しただけでなく試合の内容もお粗末という、不満の残るシーズンだった。来季以降は国内での強さを維持しつつCLで結果を残せるスカッドを構築しなくてはならない。
 そのために求められるのは、現有戦力の上積みだ。選手層が薄いと言われてきた原因はサブメンバーの質の欠乏であり、レギュラーの選手に刺激を与えられる選手が必要なのだ。ボランチではミケルとラミレスが圧倒的にクオリティが足りず、ストライカーではレミーは必要な場面で負傷離脱を繰り返し、ドログバも退団を表明した。他にもクアドラードは冬加入ということを差し引いてもいいところがまるでない。モウリーニョは今季のスカッドを気に入っており誰も放出したくないと言うが、そこに待つのはマンネリだ。彼がレアルマドリーで3年目に失敗した要因の1つが、上積みが3年間で実質ほぼモドリッチのみだったことによる停滞感であることを忘れてはならない。
 この状況下で今後若手がトップチームに割って入るには、上積みとなるレベルの選手になるしかないのだ。そう見なされなかった選手がローン、または売却されるのは残念だが仕方がない。したがって、アカデミーの選手がトップチームに定着するには、ユースチームを卒業した段階でトップチームに通用する実力まで到達するか、ローンでの修行を経て実力を示して戻ってくるしかないだろう。
 ローンでの武者修行を経てトップチーム定着を果たしたのは、現時点でクルトワとズマの2人のみだ。分母の大きさに対してこの少なさには批判もあるが、それほどトップチームに求められるレベルが高いということを示している。加えて、トップチームに還元されなかった選手も売却することでクラブの財政に貢献させたり、獲得したい選手の交渉に組み込みコストダウンさせたりすることも可能だ。チェルシーのローン戦略はこの財政的なメリットが非常に大きく、国内外でビジネスとして称賛、推奨する声も挙がっている。このローン商法に異議を唱える声もよく聞かれるが、断片的な知識による的外れな批判ばかりなので聞き流していればいい。
 もっと言えば、実力が足りずチェルシーと別れを告げることになったとしても、他のクラブで潜在能力を開花させた時に必要ならば再び買い戻せばいいだけだ。マティッチの再獲得がいい例だろう。再獲得のために高額のコストがかかったとしても、必要な補強であれば躊躇う必要などない。「今」を優先してその選手を放出したのと同じように、「今」を優先して再獲得すればいい。相手がレアルマドリーやバルセロナ、PSGでない限りは、チェルシーには再獲得が可能なだけの財力があるのだから。これもまた、チェルシーの強みなのだ。

 長くなったが、結論に入ろう。チェルシーは選手を育てている。これが紛れもない事実だ。しかしながら、最優先すべきはトップチームであり、チェルシーにとって育成とはあくまでトップチームの強化のための一つの手段に過ぎないのだ。チェルシーは育てて勝つクラブではない。勝つために、育成にも力を注ぎつつ、資金力やローンなどフルに活用することで補強と育成を同時に行う。そこで得られたものの中から、その時点での最適解をトップチームに反映させる。これがチェルシーのやり方なのだ。将来的には新ホームグロウン制度などにより育成により比重を置く必要が出るだろうが、その時はその時で同様に最適解を見つければいいだけの話である。
 全てを追い求めても、その全てが得られることはまずない。だからこそ、優先順位を付け、最も重要なものは何なのか、それを見失ってはならないのだ。選手を中心にして考えれば感情的な意見が出てもおかしくないが、あくまで優先されるのはクラブということを忘れてはならない。

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 結論を述べた上で最後に、私自身の希望を少し。モウリーニョは遠くないうちに契約延長にサインする。今の彼はチェルシーの現在だけではなく未来をも見てくれている。私がそう感じたいだけなのかもしれないが。例えば、2014年の夏には "I have this feeling that our academy is bringing players to our level."  述べており"My conscience tells me that if, for example, Baker, Brown, and Solanke are not national team players in a few years, I should blame myself." とも述べている昨シーズンのリヴァプール戦、白旗だとか2軍だとか言われ放題の11人で臨んだ試合では、Timesのオリバー・ケイは「理由が何であれ、チェルシーの監督が若手を抜擢すること自体さえ新鮮に思える。この数年ありえなかったことだ。」と語った。そのチェルシーでモウリーニョは、カラスやアケ、ベイカー、ロフタス=チーク、ブラウンらに少ないながらチャンスは与えた。普段の練習にはソランキやチャーリー・コルケット、ジェイ・ダシルバ、カイル・スコットなど少なくないユースの選手を参加させている。ファンに愛されるモウリーニョが長期政権の実現に成功すれば、今とは異なる、もう一歩進んだチェルシーが見られるのではないだろうか。淡い希望であることを自分で認めながらも、私はそう夢見ている。

チェルシーの育成について考えてみた。 Vol.1

 多くの意見が聞かれるチェルシーの育成問題について、一度自分なりにまとめようと思う。そこで、まずはチェルシーが若手育成を行う上で前提となる環境面について考えた。
 はじめに大きな枠組みで、つまりプレミアリーグ全体を見る必要がある。プレミアリーグでは、下位クラブであっても相当の資金力を持っている。例えば、今シーズンの冬の市場開幕時点で最下位に沈んでいたレスターは、チェルシーやユベントスとマネーゲームを繰り広げた末に1200万ユーロ+オプションでFWアンドレイ・クラマリッチを獲得した。10シーズンぶりにプレミアに昇格したクラブでさえも、ビッグクラブ相手にマネーゲームを繰り広げ、強豪相手に勝利を収める資金力が存在するのである。
 つまり、プレミアでは勝つためにほぼ全クラブが不自由なく補強を行える、ということだ。プレミアリーグには莫大な放映権収入があり、最下位のクラブであっても相当額の金額が分配されるなど、潤沢な収入源が確保されている。そのため、スカウト網やユースを活かし若手を安く仕入れ育てて高く売るというような方法を、プレミアリーグのクラブは採用する必要がない。ビッグクラブだけでなく下位クラブまでが、選手の成長を待たず、即戦力を必要なタイミングで獲得できるわけだ。
 さらに、プレミアリーグでは結果を出せなくては即座に監督のクビが飛ぶ。先述したバブリーな放映権料に各クラブは是が非でもしがみつきたいからだ。降格なんてもってのほか、少しでも上の順位でより高額の収入を得るために負けは許されない。加えて、CL出場を果たせばさらに高額の収入が得られるため、この傾向はビッグクラブにではより顕著となる。そのため、監督は目の前の試合に勝つことを優先せざるをえず、未来を見据え若手を登用する余裕などない。自らの立場を守るためには、潜在能力ではなくその時点で最も実力がある選手11人を毎試合選び、脆弱なポジションがあるならその資金力で即戦力を買う必要があるのだ。要するに、勝つために求められるのはロメウ・ルカクではなくジエゴ・コスタであり、ヨン・グイデッティではなくウィルフレッド・ボニーだったということだ。逆に言えば、ビッグクラブであろうとするのならばライアン・メイソンで満足するのではなくモルガン・シュナイデルランを獲得すべきであったはずである。
 また、監督が変わってしまえば、当然トップチームのコンセプトやスタイルも変わるということだ。頻繁にチームのスタイルが変わり得る状況下では、若手の育成をすることはさらに困難となる。有望株の抜擢はあくまで将来を見越したものであり、短くない期間の我慢を強いられるだろう。しかしながら、目先の勝利を優先したチーム作りをしたにも関わらず、要求を満たす結果に至らずに解任されることがままあるのが現状だ。この上でさらに若手の育成など、求める方が酷というものではないだろうか。若手の育成は、結果が出ずとも支えてもらえる盤石な体制が不可欠であり、必然的に短期政権では不可能なのである。
 結果が出なかった場合には、若手選手自身も現時点での実力不足を槍玉に挙げられ批判に晒されるだろう。そのような状況下で、ファンは未来を見越して我慢ができるだろうか。「ワールドクラスを買え」、「金があるなら使え」、と言わずにいれるだろうか。仮にファンは我慢できたとしよう、フロントは我慢できないはずだ。現状、結果を第一とせず若手の育成にも重きを置くことが可能な人物は、アーセン・ヴェンゲルただ一人である。
 プレミアでは、有望な若手よりも即戦力を優先して起用し、力不足と判断するやいなや新戦力を獲得することは避けられないことなのだ。ましてやビッグクラブであればよりその傾向が強くなる。そんなプレミアのビッグクラブで若い選手が生き残るには、メイソンやエリアキム・マンガラ、ラヒーム・スターリングらのように監督が我慢を重ね使い続けるか、デ・ヘアやエデン・アザール、ティボー・クルトワといった既に突出した実力を持つ選手であるか、アーセナルの選手であるか、このいずれかでしかないのだ。

 次に、チェルシーでの話に移ろう。このように若手の育成が難しいプレミアの中で、チェルシーはそれが特に顕著なクラブである。常勝を宿命付けられたクラブであり、そんな今のチェルシーのトップチームが求める選手というのは、「タイトル獲得に貢献できる」選手だ。加えて、今の監督はジョゼ・モウリーニョ。毎試合勝つための11人を、時には負けないことを最優先した11人を選ぶため、小規模なスカッドを好み、いわゆる少数精鋭でシーズンを戦う。さらに、クラブも潤沢な資金と卓越したスカウト網、交渉力を活かしワールドクラスの選手を常に供給する。
 この中で若手が生き残るには、少数精鋭のスカッドの中で存在感を発揮できる程の実力を既に持つ選手でなくてはならない。現在ではなく未来を買われた選手の居場所を作ることはできないのだ。潜在能力は認められつつもタイトル獲得には力不足と判断された選手たちは、他クラブへローンとなるか放出されるしかないのである。ロメウ・ルカクは「フェルナンド・トーレスとデンバ・バがいるからもう1年ローンで経験を積ませて欲しいと言った結果、戻ってきたらジエゴ・コスタとディディエ・ドログバになっていた。」と言ったが、この発言はチェルシーというクラブを如実に表している。 
 さらに、モウリーニョは「チームのために働ける」選手を重用する。モウリーニョは、チェルシーのために働けないのならアザールであっても放出する、と明言しているほどだ。チームこそが最優先されるものであり、いくら実力や潜在能力があったとしてもチームよりも自分を優先する選手に、モウリーニョは居場所を与えることはない。ポジションは保障されるものではなく実力で勝ち取るものであり、そこで生まれる競争がチーム全体のレベルアップにもつながる。そのため、ルカクやデ・ブライネのように若手が出場機会を求めるのは理解できるが、チームに彼らの居場所が優先的に作られることはないのだ。それに不満を持ち、競争を避け自分を優先した選手は、チームを去るしかない。
 モウリーニョは今のスカッドを若いチームとよく言うが、これはいわゆる若手有望株を指すものではない。アザール、オスカル、クルトワ、クルト・ズマといった若い選手たちは戦力たりうると認められ、ハイレベルな競争に挑み、結果を出してきた選手だ。その証拠に、彼らが今シーズンの2冠に貢献しなかった、と言う人はいないだろう。彼らは皆、チェルシーのタイトル獲得に貢献できる実力を持っている選手たちなのだ。
 また、モウリーニョは自身のスカッド編成について、"I cannot have a squad of 10 men and 10 kids. I must have a squad like we have now of 16 or 17 seniors and three or four kids."言っている。今シーズンで言えば、kids に該当する選手はネイザン・アケ、ルベン・ロフタス=チーク、アンドレアス・クリステンセン、イザイア・ブラウンのことだ。後半戦から3rd GKを務めるジャマル・ブラックマンやルイス・ベイカー、ドミニク・ソランキも限定的だが含まれていいだろう。
 だが、リーグ優勝を決めたクリスタル・パレス戦までの全コンペティションを通して、この7人の出場試合数は9試合(アケ4、RLC2、クリステンセン2、ソランキ1)、時間にして428分に限られてしまっている。つまり、これらの選手(= kids )はトップチームに帯同はしていても、戦力としては考えにくいというのが実際のところなのだ。彼らよりも優れた選手(= seniors )がいる以上、彼らが起用されるチャンスは僅かなのものになってしまうのである。 kids のトップチーム帯同は、ローンに出すことで得られるものよりも、seniors と共に過ごすことで得られるものを優先した結果なのだ。

 プレミアリーグにおいて、そのビッグクラブであるチェルシーにおいて、若手育成はこれほど難しいものなのだ。若手を育てるということにおいて、若手をトップチームのスカッドに置くことと起用することは全く異なる意味合いを持つ。成長のためには出場機会が必要であり、トップリーグであればなお良い。だが、プレミアリーグではその特性上、若手育成の優先度はどうしても落ちてしまう。さらに今のチェルシーでは出場機会を保障することは到底不可能と言わざるを得ない。試合に出場したいのなら、競争に挑み結果を出し、信頼を勝ち取るしかないのである。だからこそ、将来性はあれど実力の劣る若手をスカッドに置けというならまだしも、もっと使え試合に出せ、などというのは全くの見当違いであり本末転倒になりかねないのだ。

 長々とかかってしまったが、まずはここの部分を整理しなければ育成の話はできないと感じたためだ。Vol.2では、チェルシーの育成の現状や今後について考える。

2015年5月25日月曜日

クロアチア代表メンバー招集(vsジブラルタル、イタリア)

現地時間6/7に行われるジブラルタル戦(親善試合、18:00~ ヴァラジュディン)、6/12に行われるイタリア戦(EURO2016グループステージ、20:45~ スプリト)に向けて、代表メンバー30名が発表されました。

GK
ダニエル・スバシッチ(ASモナコ)
ロヴレ・カリニッチ(ハイドゥク・スプリト)
イヴァン・ヴァルギッチ(リエカ)

DF
ヴェドラン・チョルルカ(ロコモティフ・モスクワ)
デヤン・ロヴレン(リヴァプール)
*ドマゴイ・ヴィダ(ディナモ・キエフ)
*ゴルドン・シルデンフェルド(パナシナイコス)
ティン・イェドヴァイ(レヴァークーゼン)
*ダリヨ・スルナ(シャフタール・ドネツク)
*ダニエル・プラニッチ(パナシナイコス)
シメ・ヴルサリコ(サッスオーロ)
イヴァン・トメチャク(リエカ)
マリン・レオヴァッツ(リエカ)

MF
*イヴァン・ラキティッチ(バルセロナ)
マテオ・コヴァチッチ(インテル)
ミラン・バデリ(フィオレンティーナ)
マルセロ・ブロゾヴィッチ(インテル)
アレン・ハリロヴィッチ(バルセロナB)
マト・ヤヤロ(パレルモ)
マリオ・パシャリッチ(エルチェ ※チェルシーからのレンタル)
マルコ・ログ(スプリト)

FW
マリオ・マンジュキッチ(アトレティコ・マドリー)
イヴィチャ・オリッチ(HSV)
イヴァン・ペリシッチ(ヴォルフスブルグ)
アンドレイ・クラマリッチ(レスターシティ)
ニコラ・カリニッチ(ドニエプル・ドニプロ)
アンテ・レビッチ(RBライプツィヒ ※フィオレンティーナからのレンタル)
アナス・シャルビーニ(リエカ)
マルコ・ピアツァ(ディナモ・ザグレブ)
マリオ・シトゥム(スペツィア ※ディナモ・ザグレブからのレンタル)  初召集

*…遅れて合流するため、ジブラルタル戦不出場




選手たちは、6/3にザグレブで合流予定で、所属クラブの都合によりラキティッチ、スルナ、ヴィダ、プラニッチ、シルデンフェルドの5人は6/8にチームに合流する予定です。そのため、この5人はジブラルタル戦には不出場となります。

モドリッチは怪我の回復が思わしくないために、招集見送りとなりました。ほかには、チョップ(カリアリ)やミリッチ(ロストフ)、クラニチャール(QPR)などが落選。

スペツィアで26試合5ゴール4アシストのFWシトゥムが初召集となりました。本人も呼ばれるとは全く思っていなかったらしく、驚きを隠せていません。ただ、スペツィアは昇格プレーオフを控えているためにシトゥムを代表に出さない可能性もあるそうです。

イタリア戦はUEFAにより無観客試合の処分が科されています。また、チョルルカもノルウェー戦でレッドカードをもらったので、イタリア戦で出場停止です。



ニコ・コヴァチ監督
「モドリッチと今日話したよ。彼は単純に怪我が治っていないんだ。試合はおろか、練習もまだもできない状態だそうだ。彼がいないことは非常に残念だが、いつも言うように彼の健康が一番重要で、リスクを冒す意味はないんだ。」

モドリッチ
「怪我はまだ治ってないんだ。医者は4~6週間で治ると言っていた。でも、もう5週間経ったけどまだ走ることすらできないんだよ。」

マリオ・シトゥム
「実感がないよ。代表に呼ばれてめちゃくちゃびっくりしてる。呼ばれるなんて、夢にも思ってなかったんだ。僕にとってもうミラクルだよ。」


2015年5月15日金曜日

14/15シーズンを振り返る チェルシー個人編

実質シーズン終了ということで自分なりに、個々をざっくり。よくある10点満点での点数&寸評スタイルです。優勝補正で若干高めかも?


GK

ティボー・クルトワ 6.5
加入初年度ということを考えれば7点でもいいくらい。失点は彼にはどうしようもないものの方が多かった。13/14シーズンで露呈していたセットプレーでの弱さを、圧倒的なハイボールへの強さによって独りで解決しただけでも非常に大きな貢献。課題はフィード、だが成長の兆しは見られる。まだ23歳、末恐ろしい。

ペトル・チェフ 6.5
カップ戦やクルトワのマイナートラブルによって出場機会を得たが、出ればきっちり仕事をこなす姿は胸を打つものがあった。断続的な出場であっても、試合勘なんてチェフには関係ないのかというパフォーマンスだった。難しい役どころの中で、裏方に回りきっちりクルトワを支え、チームを支えたことには感謝しきれない。お願いしますアーセナルだけはやめてください。


DF

ジョン・テリー 7.5
毎シーズン年齢による限界説を覆すが、今シーズンは圧巻のパフォーマンスでリーグでも断トツで最高のCBとであった。さらに、ここぞという時の得点、キャプテンシーとアザールに並びピッチ上で常に不可欠な存在だった。ユースの試合も観に行ったり、色々将来のことも考えているようだがまだやれるだろう。最高に頼れるキャプテン。

ガリー・ケイヒル 5.5
疲労に脳震盪が響いたのか、大事な時期に低調なパフォーマンスを見せ一時期はポジションを失った。W杯もありフル稼働だったのは分かるが、彼に求められる水準からはずっと低いものであった。ズマの台頭で危機感を感じたのか後半に盛り返したが、それでもトータルで見れば低評価とせざるを得ない。

クルト・ズマ 6.0
限られたチャンスをモノにし、必要な戦力と化した。ライトバックやボランチにも対応し、バックアッパーとしても重要な役割を担った。危なっかしいところもあるが年齢を考えれば十分、ケイヒルに刺激を与える3番手という意味では十二分な活躍。ミドルネームがHappyなだけはある愛されキャラで皆を笑顔に。

ブラニスラヴ・イヴァノヴィッチ 7.0
ライトバックとして攻守に欠かせないキーマンとなり、絶対的な存在に。フルシーズン稼働したことも素晴らしかった。世界的にもライトバックとして5本の指に入る選手になったのではないか。時おり気が抜けたプレーを見せたり、失点に直結するファールがあるのが気にはなった。とりあえず契約延長しよう。

セサル・アスピリクエタ 6.0
守備でさらに成長を遂げ圧倒的な貢献度。サイドだけでなくバイタルエリアまで及ぶカバーエリアが彼がレギュラーである理由。だが、僅かに改善したもののレフトバックとして左脚が使えないのは攻撃面で非常に物足りず、彼がもう少し良質なクロスやパスを供給できていたらというシーンは少なくない。ビルドアップでも期待できないどころか狙われ出したので、成長に期待したい。

フィリペ・ルイス 5.5
出れば良いものを見せるのだが、レギュラーSBが両方とも替えがきかない存在ということで出場機会を得られなかった。左利きのレフトバックということでアスピリクエタとは違い、クロスはともかくゲームメイクや崩しの局面でアクセントになれる貴重な存在だったが、守備面でもう少しアピールできればアスピの牙城を崩せたか。バックアッパーとしては最高品質ではあるのだが、彼の力や年齢を考えれば居場所はここではないとも感じる。

アンドレアス・クリステンセン 採点なし
契約で揉めたこともあって今季は常時トップチーム帯同。出番がないのは仕方ない。光るものはあるのだが、いかんせん父親が厄介すぎる。

ネイザン・アケ 採点なし
正直ボランチとしては長所より欠点が目立った。レディングへのローンで短期ながら光る活躍を見せるあたり、潜在能力は素晴らしいものがある。今シーズンでホームグロウンステータス獲得。


MF

ネマニャ・マティッチ 6.5
彼が出ないと勝てないと言わしめるパフォーマンスを見せたが、後半になると疲労からか雑なプレーが目立った。ただ、プレミアをフルシーズンで戦ったのは実質初めてであり、相棒のセスクやラミレスが戻らないせいでカバーエリアが広すぎたりと、オーバータスクであった感も。また、インテリジェンスに欠け、安易で軽率なプレー選択が増えたのも気になった。自分はディフェンシブMFで評価されたことを思い出し、アタッキングMFへの未練を早く断ち切ってほしい。

セスク・ファブレガス 7.0
チェルシーのフットボールを見事に作り上げた。守備面で不満はあるが、それ以上に攻撃面でもたらされるプラスの方が大きい故に外せない存在。足下でもらいたがる選手が多い中で、積極的に動き直してくれるのは流石元バルサだと思わされた。ビッグマッチで消えるだの後半に失速するだの言われたが、代わりになる選手はいなかった。アーセン・ヴェンゲルに心からの感謝を。

ラミレス 5.0
彼の適正ポジションは右サイドハーフである。ボランチで起用すれば攻撃面ではいいところにいると見せかけて常にボールをロストする機械と化し、守備面では敵が来ればバイタルエリアを開ける自動ドアと化した。必要な戦力ではあるけれど、それは彼のクオリティではなくチーム事情に起因するものであり、正直売り時を逃したと思う。

ジョン・オビ・ミケル 5.5
序盤こそ格下相手にそつないプレーを見せたが、プレスをかけてくる相手には歯が立たなかった。クローザーとしての働きがメインだったが、チームで唯一の貴重なアンカータイプでありいなくなったら困る存在。復帰後のパフォーマンスを見ると、膝は案外重症だったのではと心配になる。今シーズンでEUパス取得。

ウィリアン 7.0
シーズン序盤から覚醒の片鱗を見せていたが、しっかり花を開かせた。運動量を活かした守備面での貢献だけではなく、攻撃面でも必要な存在になりレギュラーの座を確固たるものにした。見ていて期待できないわりにセットプレーをずっと任されるあたり、練習では相当いいものを蹴っているのかな。決定的な仕事をよりできるようになればワールドクラスになれる。まずはシュートを枠内に蹴る本数を1試合に1本増やそう。

オスカル 6.0
アザールにアイデアを提供できるのはセスク以外でオスカルしかいないのだが、パフォーマンスの波が激しすぎた。空回りが目立ったが、この年齢でオフが全くない数年を過ごした影響は大きい。彼がフルシーズンでパフォーマンスを維持できればチームとしてもう1段階上のレベルに到達できる。今年はやっと休めるだけに、来季の飛躍に賭けたい。

エデン・アザール 8.0
毎試合違いを作り出した。ワールドクラスへの階段を登り続ける神童が優勝へと導いた。大きな怪我をしなかったのも素晴らしい。選手間投票、記者投票ともにMVPに選ばれたのも納得の出来だった。あとは、代表ウィークのたびに変な発言させようとする某国メディアに気をつけよう。

ファン・クアドラード 採点なし
今シーズンは全て試運転でいいレベル。来シーズン、今季のサラーよりは活躍すれば十分だろう。というか彼を獲得した理由はピッチ内に留まらないわけで。

アンドレ・シュールレ 5.0
いかんせん巡り合わせが悪すぎた。必要なピースであるのは間違いなかったのだが。

モハメド・サラー 4.5
結局何もできなかった。チェルシーの試合で最も活躍したのはCLのバーゼル戦で間違いない。あれっ?


FW

ディエゴ・コスタ 6.5
待ちわびたストライカー、しっかり期待に応えた。攻撃の形をストライカーから逆算できるという意味で、彼の加入は本当に大きかった。「ピッチ内」での素行に関しては、これが彼のスタイルとしか言いようがない。離脱癖は今後の懸念、ハムストリングが癖になっていないかが心配。来シーズンは是非リーグ得点王に輝いてほしい。

ロイク・レミー 5.5
試合に出れば結果を示すのだが、いてほしいときに限って怪我をする。リヴァプールでのメディカルチェック不合格だったりと、いわゆる持ってない選手だと感じてしまった。実力は申し分ないが、稼働率という点を考えると2ndストライカーとして求められる役割を全うしきったとは言い難い。

ディディエ・ドログバ 5.5
パフォーマンスに関しては、残念だが限界が見えた。空中戦でスモーリングに負け続ける姿は見たくなかった。しかしながら、3rdストライカーとしては十分すぎる結果を残しており、ピッチ外、ロッカールームでの貢献度を考えれば必要な戦力だったことに疑いはない。安定した2ndストライカーがいれば来季も3rdはドログバでいいのではないか。


監督

ジョゼ・モウリーニョ 7.0
さすがモウ2季目。国内では成功したシーズンと言っていいだろう。リーグ戦では取りこぼしはニューカッスル戦(A)くらいで、昨季の課題をしっかりクリアした。ただCLでは不甲斐ない結果に終わったので、来シーズンこそは。今季でチームの型ができたので、夏に上積みを期待したいところ。マンネリが怖い。
※5/23追記 個人的に今シーズンはプレミアに重きを置いていたということ、昨季の取りこぼしの多すぎるところを改善してほしかったこと、この2つを考慮してこの数字を出しました。CLのことをもっと考えれば6.5だったかなとは思いましたが、それは来季に、ね。

2015年5月3日日曜日

ディナモ・ザグレブ、リーグ10連覇を手中に

5/2に行われた32節のスプリト戦を1-5でディナモが勝利したため、ディナモの優勝がほぼ確定しました。

現時点でディナモは残り4試合の状況で勝ち点80、得失点差+56で首位、対して2位のリエカは5試合残して勝ち点65、得失点差+41となってします。


そのため、リエカがここから逆転優勝するためには、①リエカが残り5試合を全勝 ②ディナモが残り4試合を全敗 ③リエカが得失点差をひっくり返す、の3つが必要な状況です。


①について、4試合は格下相手ですがリエカは最終節にディナモとの直接対決を残しています。カントリーダ(リエカのホーム)で行った試合は2-2でしたが、ディナモのホームで勝てるかどうか。カップ戦ではディナモが勝ちました。

②について、ディナモはここまでリーグ戦32戦24勝8分けと無敗です。残り4試合はザグレブ(ザグレブダービー)、ハイドゥク・スプリト(エターナルダービー)、格下のイストラ、そして2位リエカと難敵揃いですが、全敗はまずないでしょう。ハイドゥクとリエカは引き分け、リエカ相手の場合は負けも考えられますが、チーム力で圧倒的に劣るザグレブとイストラに負けることはまず考えにくいです。

③についても、厳しいでしょう。①と②が揃ってさらに③もとなると、確率的にものすごく小さなものになります。

以上のことを考慮した結果、ディナモ・ザグレブがリーグ10連覇をほぼ手中にしたというわけです。というか、優勝するでしょうね、間違いなく。

ただ、スプリト戦もアウェイゲーム、次戦のザグレブ戦もアウェイの試合のため、優勝をホーム出祝う時がくるまではちょっと時間が空きます。ホームに帰ってくるのは5/17(予定)のハイドゥク・スプリト戦。よりにもよって、ハイドゥク相手のクロアチアナショナルダービーです。これは発煙筒やらサポーターがすごいことになりそうですね・・・。

10連覇ってどうなんだ…って気もしますが、ライバルのハイドゥクは内部のゴタゴタだったり普通に弱くなったりで2位ですらいれない状態。ここ数年で台頭してきたリエカも取りこぼしがあったり、前半戦で点を取りまくったクラマリッチが冬に抜けたりでディナモに食い下がれませんでした。リエカはその分ELで大健闘したんですけどね。結局、選手の個の力でも、資金力でも、政治力でも最も優れたディナモがトップでした。


ということで、Twitterのディナモのアカウントも優勝したとか言ってますし、選手たちも大喜びです。

@goncalosantos13が投稿した写真 -